屋久島のダイビングにおけるフィッシュウォッチング
コブシメの交接
産卵中のメスに襲いかかるオス
産卵中のメスと見守るオス
産卵中のメスとそれを見守るオス

Diving in Yakushima is.
Fish Watching…? —

すべての生き物は皆、何らかの形でつながっており、1つの種が単独で生きることはできません。
魚も同じで、魚を観察していると彼らが様々な他の生き物との”つながり”の中で生きていることに気づくでしょう。

「フィッシュ・ウォッチング」はサンゴ礁域の魚だけを見る楽しみではありません。
サンゴ礁域の魚を観察するという事は、それを取り巻く様々な他の生き物や環境を嫌でも見ることになります。
魚の棲家やエサとなるサンゴ類や海藻類、ヤギやトサカなどのソフトコーラル、逆に彼らよりも食物連鎖の上位に位置する大型の回遊魚や哺乳類、爬虫類たち、体に着いた寄生虫を食べてもらい、死後は分解してくれる甲殻類や貝類も魚を観察していると無視できない存在となります。
つまり魚だけを見ていても、魚の事は何も分からないで終わるでしょう。

フィッシュ・ウォッチングよりも歴史が古い「バード・ウォッチング」の達人(レンジャー)は鳥だけでなく植物や昆虫、野生動物にも詳しいものです。
これと同じように「フィッシュ・ウォッチング」は魚だけを見て楽しむ趣味だと思われがちですが、僕はウミウシや甲殻類、はたまた貝や海藻、サンゴなど海の生き物すべての観察をひっくるめて「フィッシュ・ウォッチング」だと考えています。

また、フィッシュウォッチングは観察した種類数を追い求めたり、珍しい生物や小さな生物を探すなど、コレクション的な要素に主眼を置きがちですが、普通種の行動や生態に興味を持ったり、その海域ならではの生き物を観察する事でさらなる楽しみが生まれてきます。
「フィッシュ・ウォッチング」は魚だけでなく、魚を取り巻く様々な生き物や環境を見て楽しむ遊びなのです。


フィッシュ・ウォッチング=マクロ? —

よくある勘違いに「フィッシュ・ウォッチング=マクロ」だと思っている方が多いのには驚きます。
確かに今流行のフィッシュ・ウォッチングは小物探しが中心になっています。
ウミウシや甲殻類、ハゼなどに人気があり、それはまさに”マクロ”な生き物たち。。。

しかし、僕は回遊魚やウミガメ、サメやエイの仲間の生活を覗くのもフィッシュ・ウォッチングだと考えています。
ましてやブダイやハタ、ニザダイの仲間などもフィッシュ・ウォッチングの素材としては最高に面白い生き物たちだと思います。


「見る」から「観る」へ —

フィッシュ・ウォッチングというと珍しい生き物を見たり、稀とされる生き物を探したり、小さくて変な生き物を探す事だと思っている方も多いかと思います。
確かにめったに見られないような生き物を見たときの感動は大きいし、そんな珍種や擬態していて誰も気づかないような小さな生き物を見出したときの喜びは大きいものです。
しかし「探す」、「見る」という行為の多くはそれ自体が目的になってしまっているので、見てしまうと(見つけてしまうと)満足しちゃう方が多いのではないでしょうか?
これは水族館や動物園巡り、はたまた切手集めやコイン集めなどに良く似ている気がします。

でもフィッシュ・ウォッチングは実はここからが本当に楽しいという事をご存知でしょうか。。。?
繁殖、捕食、睡眠、共生など生き物の生活や社会構造を見るようになると、フィッシュ・ウォッチングはますます楽しいものとなります。
「見る」から「観る」へウォッチングの意識を変えると、フィッシュ・ウォッチングがさらにエキサイティングなものに感じるでしょう。

実際、「○○○(生物名)を見たい」というリクエストはあっても、「○○○が~しているところを見たい」とか「○○○がこんな時どんな動きをするのか?見たい」というリクエストはあまり聞きません。

ちなみに産卵や求愛など繁殖関連の行動はダイバーの間でも比較的メジャーな生態観察ですが、求愛や産卵の瞬間(ピーク)をウォッチングするだけなら、まだ「見る」という視点とあまり変わりはないと思います。
産卵に至るまでの駆け引きなどのドラマを見て、ストーリーや社会構造全体を追うなどして、生き物を「観る」ようになると面白さが倍増します。
次々と疑問や不思議と出会うことになるので、「見る」行為と違って「観る」には終わりがなく、いつまでも楽しめるのです。

生き物単体を見るのではなく、ストーリーを観る。
このときのワクワク感やドキドキ感を、皆さんにもぜひ味わって頂きたいと思います。


分類と生態 —

「この魚は何という魚だろう?」
名前を知りたい!という欲求は多くの方が持っている感覚だと思います。
ガイド仲間の間では「~属の一種」ではその魚に対する興味も薄れてしまう。。。ともっともらしい事が言われていたりします。

一方で棘の数や鱗の数、ヒレに微小な点があるか?ないか?などというレベルで見分けるようになると、「そこまでの細かい分類には興味がないから。。。(^^;)」という方がいます。
確かに僕も形質や斑紋だけを細かく見て分類していく行為にはあまり興味はなく、面白味も感じません。

でも自分のフィールドに棲む生物相を把握するために「これとこれは同じ種類の魚」、「これとこれは別の種類の魚」というように、名前は分からなくてもその種類の存在だけは認め、しっかり見分けてあげたいと考えています。
では面白さを維持したまま、どのように分類していくのかというと、それは生態や社会行動で見分けるのです。
これなら例え名前が分からなくても(名前を知る必要もなく)、楽しく分類ができるのです。
むしろ、これは実際に海に入って実物を見る事ができる僕らダイバーだけの特権であって(形質や遺伝子などでの分類は机の上でもできる)、せっかく現場に出ているのにそれをやらずに形質だけで見ようとするのはもったいない。
そういうのはプロの学者さんに任せて、僕らはもっと面白く、ダイバーにしかできないような方法で分類しましょう。

よくよく考えてみると、生物は「生き物」なのだから生態や社会行動で見分けていくのは、至って自然の事なのかもしれません。
「分類」は「生態&社会行動」と切っても切り離せない関係にあるのだと思います。


Photo info. —
コブシメの産卵 / 4-5月

  1. ①コブシメの交接
  2. ②産卵中のメスを襲うオス
  3. ③ウスサザナミサンゴに卵を産みつけていく
  4. ④毎年、春になるとそこら中からコブシメたちが集まってくる



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